「考察」

3月5日開催のTAMAとことん討論会のプログラムとして予定していた「考察」ですが、時間短縮での開催となったため、本ホームページにその一部を文章として掲載することにしました。

第29回TAMAとことん討論会実行委員会


 今回の第29回TAMAとことん討論会のテーマ「買い物」を切り口として多摩地域市民への作文募集、市町村にむけての事前調査を実施しました。それらから読み取れることをいくつかお示ししたいと思います。

〇作文について
 まず、作文ですが。作文募集は今回で3回目となります。目的の一つは市民の声を集めたいということです。私たちはそれぞれ異なる暮らしをしていますので考えることや感じることは様々あると思います。多くの市民が同じように思っていることもあるでしょうが、作文のようにリラックスした空間で書き進んでいるからこそ出て来る本音やつぶやき。こうしたことを市民の声として表に出していきたいということで行っている取り組みです。
 さて、今回は多くの作文を送ってくださった中学校がありました。また、前回に続いてお送りいただいた方、前々回から続けてお送りいただいている方もいらして総数で245通となりました。実は3月5日の討論会のスクリーンの発表数値に誤りがありましたので、ここで訂正いたします。

 受賞作品は後日発行する報告書に選考理由とあわせて掲載しますので、ここでは全体の傾向について触れたいと思います。
 作文の多くに書かれていたことは、食品ロスのこと、プラスチック容器のこと、マイバッグのことでした。これらについて、多くの市民が高い関心を持っていることがわかります。 特に食品ロスについては、買い物前の冷蔵庫チェックについて書いている人、消費期限や賞味期限に関することを書いている人が目立ちました。ただ、「賞味期限切れだから捨てる」という記述もいくつかあり、あらためてこの二つの意味の違いや賞味期限が過ぎてもすぐに捨てる必要はないということを伝えることの大切さを実感しました。

〇事前調査について
 一方調査についてですが、こちらは討論会当日に発表した通り30市町村中26市町村から回答をいただきました。

 まず、1問目がグリーン購入・グリーン調達に関することです。環境に配慮した物品購入に関するガイドラインや指針の策定状況についてですが、26市町村中7市町村が作っていないという回答でしたが、策定しホームページで公表しているという市町村が11ありました。

 問2は、小売店舗を対象とした環境配慮に関する取り組みについての登録制度の有無です。エコショップとかリサイクル協力店といった制度名が一般的です。こちらについては26市町村中14市町村という半数以上がないという回答でした。ホームページ上で制度の概要を閲覧できるのは11市町村でした。

 問3は、食品ロスに関する飲食店を対象とした登録制度です。食べきり協力店という名称が一般的な名称です。こちらは26市町村中9市町村があると回答し、8市町村がホームページでの閲覧も可能であると回答がありました。

 問4では、近年取り組んだ買い物に関する啓発事業を具体的に上げていただきました。一つ一つが大変興味深い取り組みですが、マイバッグ持参に関することや手前どりの表示についての取り組みが目立ちました。

 問5は、公表しないことを条件に課題と思われることなどを書いていただきましたが、問1についての記述はありませんでした。回答を依頼したのが、ごみ減量を担当している部署でしたので、物品購入に関しては他部署の担当であることからこの問いへの記述がなかたのではないかと推測しています。
 問2と問3の店舗の取り組みを認定する制度については、店側にメリットがなければ登録申請してくる店が増えないこと、環境関係以外にもさまざまな認定制度があり店舗側が混乱しているなどといったお店側の状況について。申請を待つだけではなく積極的に店に声をかけて認定店を増やすことは重要だという行政側の姿勢についての意見がある一方、認定後に継続して認定した店へのフォローをやれきれるのか、認定しておしまいでいいのかといった担当者としてのなやみもありました。また、市民に対しての周知方法に悩んでいる記述もあり、認知度の低さが申請店が増えない原因の一つではないかといった内容の記述もありました。
 また問3については、コロナの影響により飲食店側に余裕がないことや認定しても閉店してしまうお店が出るなど、社会情勢に振り回されている実態が浮き彫りとなりました。その一方テイクアウトに利用する容器についての評価を行うなど新しい指標の検討をしている自治体もあるようです。

〇全体を通して
 事業者としてだけではなく、たくさんのものを買う大きな消費者として行政が何を購入していくかは社会全体にとって非常に重要なことです。私たちが日常的に買い物をするのとはまったく異なる規模のお金が動くことになるからです。
 20年以上前の話になりますが、小学生が使う算数や国語のノート、学習帳と呼ばれていますが、そのノートに再生紙を使おうという運動を仲間といっしょに起こしたことがあります。その時、ノートメーカーから言われたことは「売れないものは作れない」ということでした。いくら理屈を並べても客観的な数値で示すことができなければ、消費者の声にはならないということです。一部の人たちだけが欲しいと思っているものをメーカーは作らないということでした。そこで、私たちは本当に一部の人たちだけが欲しいと思っているものなのかをあらゆる手段で調査し、すでに先行的に製造していた再生紙の学習帳を販売している店舗を紹介したり、販売所を増やすなどして実績をつくりました。その活動をさまざまなメディアが取り上げ、「作らない」と言っていたメーカーもいまでは当たり前のこととして再生紙の学習帳を作り、お店では販売し、子どもたちが使っています。もちろんその過程では私たち市民の動きだけではなく、社会全体が必要と認め、制度の見直しなどもあったわけですが、欲しいが形になったというスタートとゴールだけが消費者である私たちの目の前に現れた事例といえます。
 こうした経験から、大きな消費者である行政が環境配慮型商品を率先して購入することで販売額という目に見える結果が社会に影響を及ぼすということは決して過言ではないと考えます。環境配慮型商品の売上が上がり、巷にそうした商品の流通量が増えることで私たち市民がそれらの商品を難なく購入することができる。多少の差はあるものの環境やごみ減量に関心が高い市民が多いことから、欲しい商品が目の前にあるというのはストレスのない買い物ができることにもなります。一事業者として環境配慮型物品購入を行っていくことがグリーン市場の活性化につながること、その役割を果たしていることを意識していただけると幸いです。

 先に作文について報告した通り、書かれていた内容として多かったのは食品ロス、プラスチック容器、マイバッグで、これらについては調査の問2、3、4と関連しています。
 食べ物の買いすぎによる食品ロス、食品包装としてのプラスチックの多さ、レジ袋有料化によってマイバッグがあたりまえになった買い物スタイルといったことで文面から読み取ると買い物をする場所としてはスーパーがほとんどのようです。
 多くの市民がスーパーを利用していることを前提とした場合、スーパーの情報を伝えることは大変意義のあることだと思います。しかし、調査回答にあるように認定した店舗の情報が市民に伝わっていない現実があります。行政側としてはホームページやごみカレンダーなどの紙媒体を使うなどして周知の努力はしているもののなぜか伝わらない。伝わらないから認定店になろうとするお店が少ない。伝わらなければ申請に手間をかけてもメリットはない、すなわち売上がよくならないというのが店側の言い分なのだと思います。
 コンビニやスーパーで見かけることの多い手前どりというポップですが、環境省等のホームページから自由にダウンロードして使用することができます。すなわち市町村規模ではなく、全国規模で動いている取組と言えます。それを市町村としてローカルにどのように落とし込み、活用していくのか。また大型店や全国チェーンの店舗と地域に根差した個店では当然のことながら品ぞろえも販売方法も異なってきます。それぞれのお店にはそれぞれ利点があるわけでそれをどのように市民に伝え、消費行動につなげていくのか。とても重要な問題であると思います。

 認定制度を前提としていることから周知は行政の役割のような表現になっていますが、前述した学習帳の事例のようにさまざまなメディアを活用していくことは重要です。その当時は現在のようなSNSはなく、メディアといえば新聞や雑誌、テレビやラジオしか考えられませんでした。しかし、現在も当時も最も効果があると言えるのが実は口コミです。口コミは市民の力であり、隠れたメディアとも言えます。残念ながらコロナ禍においてはなかなか人が集まる場を持つことはできません。人と人が出会うとどこで買ったとか、どこに売っていたとか、あの店はどうのこうのとかのちょっとした話が情報として伝わっていくものです。

 本来は討論会当日に割り当てられた時間の中で考察として作文と調査結果のまとめをお話しする予定にしていましたが、時間短縮での開催となったことから討論会後にホームページに発表することになりました。
 もし当日話をすることができたら、こんな口調で話していたのではないか・・と思いながら綴りました。
 報告書には加筆した文章を掲載する予定です。

(文責 江尻京子)