◆□◆“北多摩ルール”づくり委員会◆□◆

 北多摩8市(清瀬市・小平市・田無市・東久留米市・東村山市・東大和市・保谷市・武蔵村山市)の後援を得て、8市の市民・行政の連携プレイで行われた98年度第6回TAMAとことん討論会「北多摩とことん」は、その成果に基づき、次のアピールを採択した。

1.「燃やす」から「燃やさない」へ。生命(いのち)の基である「環境」に配慮した市民行動の位置付けを図り、限りある資源、限りある生命を大切にしよう。

2.“北多摩ルール”の確立を目指し、できることから始めよう。

3.“北多摩ルール”は、さらに広域的なルールづくりを視野に入れながら、その準備に取りかかろう。

(第6回TAMAとことん討論会北多摩アピールより)

 北多摩8市には、3つの中間処理施設――柳泉園(東久留米・清瀬・保谷・田奈)、小村大(小平・武蔵村山・東大和)、秋水園(東村山)――があるが、分別・収集方法、資源化方式等、同じ処理施設管内でもまちまちであったり、各々様々な問題を抱えている。その上、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法等新たな対応が迫られている。8市の行政・市民協働による「北多摩とことん」の連携プレイを維持し、アピールA「北多摩ルールの確立を目指し、できることから始めよう」の具体化に昨年度末から取りかかった。

 

◆□◆北多摩ルールづくり〜廃電池編1〜◆□◆

講 師:鬼頭 孝典氏(町田市環境部リサイクル推進課)

開催日:1999年4月15日(水)

 

 まず講師から、町田市を中心として廃電池の現状、それらの問題点について解説があり、続いて全員で、「ではどうする?」という話に入り、時間いっぱい、議論沸騰が続いた。

町田市における廃電池の現状

 1988年7月から1990年2月にかけて、町田市廃乾電池適正処理検討委員会が発足。そして、「報告内容については、廃乾電池のデポジット制度の法制化、廃乾電池回収条例の制定、国による有害廃棄物の規制、水銀をはじめ種々化学物質の大気への放出拡散規制等の必要性を指摘」することになった。

 その結果、1990年2月に行われた「廃乾電池適正処理に関する事項の調査研究についての報告」には、次のように出ている。

 「廃乾電池の処理について、当初から回収されたものを最終的にどうするかは大きな課題であった。環境汚染防止という観点からは、とりあえず〔←下線〕(下線は報告担当によるもの)北海道の回収工場に処理を委託するのが応急的な対策として、多くの自治体が採用してきた方策であった。しかし、この方式によって、今後も自治体が多額の処理費用を税金から支出し続けることは困難な問題を含んでいる。したがって根本的な解決に当たっては、恒久的な対策のための制度づくりが必要であり、法的な措置も必要。(以下、略)

 廃乾電池は、2千t以上収集できれば、そこから金属資源を回収し、企業として経済的に採算にのる資源化プロセスが、既に完成している。しかし、このプロセスが操業できないのは、原料である廃乾電池を効率よく収集できないからである。

 廃乾電池の処理の問題は、処理技術や処理施設不足が問題なのではなく、年間7万tも国内で排出される大量の廃乾電池をいかに効率よく確実に収集するかという収集方法と、それを全国的規模でいかに推進するかが問題なのである。(以下、略)」

 そして、次のような施設を提案している。

 「廃乾電池の資源化には収集が最大の問題である以上、デポジット制度は極めて有効な手段である。年間7万tも廃棄されている廃乾電池を全国的な規模で収集するためには、国においてデポジット制度の法制化は不可欠である。

 これによって回収率が低下して、ほとんどがその実行を上げていない水銀乾電池の収集をはじめ、アルカリ乾電池の収集も実現が可能なのである。全国的な規模でこの方式を採用すれば、95%以上収集が可能となろう。(以下、略)」

 以上のような解説に続いて、多摩地域各市の廃電池回収状況の紹介があった。

問題点について

 前述の議事録中にも、問題点が指摘されており、また提言においてもほぼ明らかになっているが、現時点においては、特に家電リサイクル法との関連が重要である。

 その法の枠組みにおいて、廃電池/廃蛍光管を含めて考えるべきではないか。言い換えれば、「誰の責任でやるのか」ということである。自治体としては、もうやりきれない。したがって今後は、排出者責任ということで、メーカーと消費者との責任においてやってもらいたい問題である。

ではどうするか

 市民と自治体は一緒になってメーカーに回収・リサイクルを要請する。(メーカーが、最も電池に関する固有技術を持っているわけだから)

 一方、回収の効率を上げる方法としては、ごみの「各戸収集方式」を採用する中で廃乾電池を「有害物」として完全収集する。

 その他、ごみの有料化や収集回数などの問題が、同じように回収/処理困難なプラスチック類の問題と共に、その「適正処理」に関して、いろいろな意見が出された。

(リポート:三津石源一)

 

◆□◆北多摩ルールづくり〜廃電池編2〜◆□◆

 講 師:近藤日出男((社)電池工業会調査担当部長) 坂根稔将((社)電池工業会環境・リサイクル小型二次電池担当部長)

 開催日:1999年5月18日(火)

 

 まず、近藤講師から、「電池の種類、構造、それぞれの特徴・用途(一次電池・二次電池)と、生産・販売量および趨勢」、「使用済み乾電池のリサイクル状況、ボタン電池・小型二次電池の収集ルート、各種リサイクルマーク、リサイクルBOX等」の話が1時間程度行われ、質疑に入った。

電池の種類と構造

 電池には大別すると約38種類もあるが、その中で、放電が1回きりの「一次電池」と充電して繰る返し使える「二次電池」がある。

 マンガン乾電池、アルカリ乾電池、ニカド電池、空気電池、酸化銀電池、リチウム電池、鉛蓄電電池等の構造(略図による説明)

乾電池と水銀のかかわり

 使用済み乾電池に含まれる水銀が、ごみ処理を通じて環境に放出され、「水銀により環境汚染が生じるのではないか」ということが、社会問題となっていた。

 このような状況の中で、昭和60年(1985年)7月、厚生省は生活環境審議会・廃棄物処理部会・適正処理専門委員会の答申を受けて、「処理が困難な廃棄物対策について」が各都道府県へ通達された。それによると、使用済み乾電池の廃棄の骨子は次のようなものだった。

 一般廃棄物中に含有される乾電池は、他のごみと合わせて処理しても生活環境保全上、特に問題となる状況にないこと。また、アルカリ乾電池の水銀含有量の低減、ボタン型水銀電池の回収、処理等により生活環境の保全の確保が一層図られる見通しであること。したがって、生活環境保全上の観点からは、現行法制度の遵守が図られれば、特段の措置を講ずる必要は認められないこと。

 より快適かつ安全な生活環境を求める社会的ニーズの高まりに対応するため、関係者がそれぞれの立場から、使用済み乾電池対策に関する基本的考え方に可能な範囲で取り組むことが求められるが、ごみ中の水銀含有量を低減することを基本とする事業者における措置が、最も妥当であると考えられること。

電池の回収状況

 使用済みの乾電池は、昭和60年(1985年)の厚生省生活環境審議会の答申の通り、一般廃棄物として不燃ごみと合わせて廃棄してもよいことになっているものの、廃棄の方法については、各自治体の判断に任されており、自治体によっては自主的判断に基づいて分別回収を行っているところもある。

 環境保全に積極的な欧州の一部の国では、「全ての電池回収を義務づける法律」の制定をしているものの、使用済み乾電池の再資源化をめざしたリサイクル方法は必ずしも確立されていない。

 それに比べて、ボタン電池、小型二次電池の収集ルートは、構築されている。

質疑と討論

 残された1時間は、「新しい電池について」「電池の見分け方が不明」「電池の生産量・排出量を重量で図ることについて」「循環型社会における製造者責任」「各種電池によって一様でないリサイクル技術」「メーカーは処理業者への情報を充分に」「量販店で売られる電池もカバーするリサイクル体制を」「乾電池のデポジット制を」等々の質疑が続き、時間不足を感じるほどであった。

(リポート:三津石源一)

 

◆□◆どうする?氾濫するプラスチックごみ◆□◆

 三市ごみ連絡会は、これまで様々な活動を続けてきたが、ここでもう一度、処理困難物といわれているプラスチックごみに対して、どういう考えでこれから進んでいったらいいのか、ということを改めて勉強しようということで、3回の学習会を計画しました。

 なお、「どうする?氾濫するプラスチックごみ」は、「三市ごみ連絡会」主催による連続学習会です。「GOMI学習フォーラム」の一環としても位置付け、地域の活動として支援してきました。

 

◆□◆循環型社会づくりに向けダイオキシン問題を考える◆□◆

講師:池田 こみち氏(環境総合研究所副所長)

開催日:1999年9月12日(日)

 

 環境総合研究所は設立して14年。ダイオキシンなどの化学物質の測定、分析調査や環境影響調査など、主に行政(環境庁、建設省)からの要請による仕事と自主的研究(ex.所沢の野菜のダイオキシン測定やタンカーからの流出した油汚染の調査)やNGOからの要請、地域住民からの要請などにより現地調査もし、サンプリングしたものを測定分析し、それをどう評価するのか、どう解析するのかなどさまざまな方法で、住民運動をサポートしてきた。

ダイオキシン汚染地域の現場からの教訓

 ダイオキシン汚染地域の現場の実態から、いくつかの日本全体の課題が分かる。日本のダイオキシン対策は欧米と比べて10年以上遅れている。特に法制度面での遅れが顕著。ごみを燃やせばダイオキシンが出るということは20年以上も前から行政は分かっていた。にもかかわらず、排ガス規制はやっと昨年から、今年7月に、ようやく議員立法でダイオキシン類対策特別措置法ができた。なぜそうなのか。行政の透明性、情報公開制度の欠如で、いつまでも行政と一部の専門家・学者の密室的議論のみで、経過が表に見えてこなかった。

ダイオキシン・環境ホルモンとプラスチック

 プラスチックは製品でいるときは安定しているが、悪い条件で燃やされたり、熱を加えたりすると、化学反応で意図しない危険な化合物が何千種類も出る。

 塩素を含んだプラスチックは、ダイオキシン類や重金属が出やすい。たとえ塩素が入っていなくても、燃やし方によって様々な有害物質が出やすい。

 添加物は添加されているだけなので、燃やさなくても環境中に落ちてくる。添加物そのものが有害物質である。

 プラスチックは安くて、丈夫で、軽くて、長持ちという有効な特性を持っているが、メリット・デメリットを考え直して、選んで使うという方向に持っていかなくてはならない。わざわざプラスチックにしなくてもよいものまでプラスチックにする必要はないのではないか。ぷ裸子チックは戦後使われ始めたもので、歴史が浅く、50年埋めたら100年埋めたらどうなるのか、ということが経験がないので分からない。

 プラスチックごみの集めかたは統一されていない。不燃ごみとして集めながら燃やされている。

 塩ビは発熱量が低いので、燃やすのには向かない。また、発熱量の高いものは焼却炉に負荷をかける。

 塩ビがリサイクルされて、例えば卵パックや消しゴムとなり、これらが使用後はそのまま家庭ごみとして焼却されてしまうという、おかしな形での塩ビの再生利用は、かえって迷惑といえる。また、再生燃料として固形燃料があるが、そのものにダイオキシンが既に含まれており、燃やし方に規制がないので、かえってダイオキシンを拡散することになり非常に危険である。

 プラスチック材質識別マークは、アメリカで作られたもので、日本ではまだ制度化されていない。

 東京都清掃審議会は昭和49年に、プラスチック製品など5品目を適正処理困難物として指定するよう答申し、事業者が自ら回収して産業廃棄物として処理するよう方針を示したが、うまくいかなかった。

ごみ焼却とダイオキシン汚染

 年1回ぐらい大気中の濃度を測ってみても何もその地域実態を表していない。その日のデータでしかないから。「同じ場所で最低50回ぐらい計らなければ、本当の数値はわからない」と摂南大学の宮田先生は言っている。

 平成9年の「ダイオキシン類に係る指定物質排出施設及び指定物質抑制基準」は、煙突から出る排ガスの規制のみで、灰は対象になっていない。大気、水質、土壌の基準値は今年度中に規制をつくることになっている。

 焼却炉の大型化は、プラスチックを燃やすということ。全量焼却ではごみは減らず、ごみの分別をきちんとし、資源化しようという市民の意欲を削ぐものとなる。(例 横浜市)

 広域化・大型化についてはもっと研究が必要。

 プラスチックによる環境汚染の防止策として、まずはプラスチックを使わないこと。プラスチック全部というのは非現実的かもしれないが、特定の製品についてはできる。

現場の事例から

 ダイオキシンが地域にどのように拡散していくのかシミュレーションしたものから見ると、多摩地域へは所沢西部清掃工場からの影響が大きいのではないか。この清掃工場は12,000ng出ていたのを隠していた。

 朝日新聞の科学雑誌「SCIAS」10月号に所沢の野菜騒動について詳しく載っている。

 この秋、生活クラブ生協と一緒に、いろいろな地域の「松の葉」を集めて、それに含まれているダイオキシンの濃度測定をする。松の葉は脂肪分が高くダイオキシンを取り込みやすいので、その地域の大気の濃度に換算して把握することができる。松の葉は黒松(夏過ぎた濃い色の葉)に限定。点を面にして濃度マップをつくり、知らせていく。

質疑への応答

◎ダイオキシン測定分析値の信憑性について、分析業者は前処理として、溶媒を入れて乾燥させるのにチッソガスを吹き付ける。そのやり方がずさんで、毒性の高い四塩化、五塩化ダイオキシンがほとんど吹き飛んでしまって、トータルのダイオキシンの数値が低く出ているケースが多い。

◎プラスチックごみを燃やさないで、圧縮などをして埋め立てた場合でも圧縮するのにどういう過程を踏むのか、燃やさなくても、ある一定の熱を加えればダイオキシンは出る。

◎小平・村山・大和衛生組合では、不燃ごみを破砕機にかけているが、この施設内は非常に暑い。破砕機からどれくらいの熱が出ているのか、機械周辺のダイオキシン測定も難しいかもしれないが、してmたほうがいい。

◎立川市のプラスチックごみは、油化施設が使えなくなり、今はコークスの還元剤として使っている。鉄高炉で高温のためダイオキシンは出ないし、灰も少ないが、重金属は出やすくなる。ごみは出口での対応はもう無理、入り口での規制が必要。

◎ペットボトルからも環境ホルモンが出るらしい。データ分析は詳しく出ていない。ペットボトルはペットボトルに再生できないので、他のものになっている。ペットボトルでも醤油や油、シャンプーやリンスなどの薬品系に使用されたものは、他に再利用できない。

◎所沢で燃やしている産業廃棄物は建設廃材が多い。それも壁紙、塗料、糊などが付いたままのもの、合板やビニールタイルの裏側など。近所の材木屋さんで、燃やしているのがこういうものなら、やめてもらうべき。 

◎農業用シート(ビニールハウス)の中の土壌や農作物に、塩ビの添加剤であるフタル酸エステルが落ちるというデータが学会に発表されている。

◎所沢の野菜のダイオキシン測定をしたもののうち、八塩化化合物(農薬や除草剤を使用していれば、必ず出る)がまったく検出されなかった小松菜があった。所沢東部の「生活村」の野菜で、20年以上無農薬栽培を続けているグループ。また、所沢の野菜でも根菜類は、葉っぱには出るが、根のほうには出ない。

◎スーパーは包装材などの回収をしているが、個人商店が並んでいる商店街ではできないというのではなく、ごみの発生を減らすために商店街だからできること(対面販売・計り売り・買い物袋持参など)を消費者も協力し合って積極的に進めていくのがよい。

(リポート:三市ごみ連絡会事務局)

 

◆□◆業界団体の取り組み◆□◆

講師:横田 克巳氏((社)プラスチック処理促進協会広報部長)

(社)プラスチック処理促進協会(以下、「協会」)の構成メンバーは、主に「ポリエチレン」「ポリプロピレン」「ポリスチレン」「塩化ビニル樹脂」の4種類のプラスチックを作っている(29社)が正会員として入っている。

 

プラスチック処理促進協会

 協会の設立当初は、ちょうど大阪万博のころで、この万博の会場で使い捨てのプラスチック食器を使うかどうかという問題で、近隣のごみ処理場の処理能力の関係から取りやめになるということがあった。いずれプラスチックについては、処理処分の問題が起きてくるだろうということで、この協会を作った。

 また、プラスチックは機能性が求められた結果、種類が非常に多い。そして、その種類ごとに分けながらマテリアルリサイクルができない、ということが大きな問題で、ではこれをどうやっていくのか、そのための技術開発が様々行われてきたが、協会は、これらプラスチックの処理処分、再資源化にかかわる技術開発を中心に仕事をしてきた。また技術開発をバックアップするための調査事業や、処理処分、再利用のための社会システム推進のための調査関係にも力を入れてきた。広報部門としては、ビデオの作成、貸し出しもしている。また、プラスチックごみの約半分は一般家庭から排出されており、その処分は各自治体が行っているので自治体の係りも多く、意見交換も行っている。

廃プラスチックのフロー

 樹脂生産量1,521万t⇒国内樹脂製品消費量1,136万t⇒使用済製品排出量866万t⇒廃プラ総排出量949万t⇒一般廃棄物478万t・産業廃棄物471万t⇒有効利用廃プラ399万t

家庭から出てくるプラスチックごみは容器包装が圧倒的に多い。この部分のリサイクルを進めれば、ごみは減るだろうということで、容器包装リサイクル法が作られたと理解している。

廃プラスチックの再生利用

 再生利用原料は、そのほとんどが生産加工ロス品である。プラスチックは樹脂によって特徴が違い、混ぜては使えない。組成がわかっていて、きれいで大量に出るものが使われているのである。

 プラスチックリサイクルの現状と課題のレポートで、1997年実績で113万tの廃プラスチックの再生利用先が分かる。廃プラスチックは、ペレット状(玉)にして、新品と混ぜ合わせたりして使っているものが非常に多い。例えば、プラスチックタイルやパネルの裏側のアンコ材などに多く使われている。

 ペットボトル協議会や発泡スチレンシート工業会におけるリサイクルは、始まったばかりで商品開発が行われている段階であるが、家電製品の梱包材のリサイクルは、産業廃棄物として30年近い歴史があり、減容して輸出されハンガーやカセットケースに使われている。

 容器包装リサイクル法における廃プラスチックについての考え方は、プラスチックをペットボトルとペットボトル以外の2つに分け、ペットボトル以外のプラスチックは、ひとまとめにして処理(再商品化)しようということになっている。この法律における特定事業者というのは、包装材を使って商品を作る業者で、例えば、ペットボトルそのものを作っている会社とペットボトルに品物を入れて商品を作っている会社が対象となる。協会はプラスチックの原料を作っている会社の集まりなので特定事業者ではない。

 この法律は当初、ペットボトル以外のプラスチックの再商品化は油化を想定していたが、その後高炉利用とコークス利用、ガス化溶融が付け加えられた。

 ◎油化:熱をかけて分解し、油にする技術。立川市、新潟市にプラントがある。塩素を抜いたり、膨大な前処理が必要。

 ◎高炉:還元剤として、重油やコークスの代わりに使おうとしている。最も効率がよいとされ、ドイツでもマテリアルリサイクルとして認められており、今後主流となる使い方。NKKが産業廃棄物から始めており、今、年間4万tぐらい処理している。

 ◎コークス炉:鉄鋼関係で石炭の代わりに原燃料としてコークス炉で使おうということで開発がすすめられている。

 ◎ガス化溶融:宇部興産、荏原製作所と一緒に技術開発を行っている。

 一般廃棄物の中のプラスチックをどうするかが大きな課題となってきたので、協会も、この廃プラスチックを資源としてどう考えるのか、そして資源循環型社会ができてきても、リサイクルの輪がとじるものを作っていきたい。ということで今、協会は容器包装プラスチックをどうするか技術開発を進めている。

質疑応答

◎油化施設の現状は?

⇒立川市の施設は実証実験のためのものだったので、一定期間の実験の後、結果をまとめて終了したが◎今は前処理の部分だけ使ってコークス炉の原料を作っている。新潟市の施設は火災を起こしたが、ビジネスとしてやっているので今も続けている。年間6,000t処理している。

◎油化施設は増えていくのか?

⇒札幌と三笠に新潟市よりも大きい施設ができる予定。

◎プラスチックのリサイクルは何回ぐらい可能か?

⇒現在は1回目がものすごく大変。例えば、発泡スチロールでいうと、集めて熱をかけて枕木のようなものにして、中国に輸出し、カセットケースのような製品となって戻ってくる。今のリサイクルはここまで。1回だけ。物理的な性質がどのくらい劣化するかというのは、微妙なところで、リサイクル品には透明感を求めることはできない。物性は落ちなくても色がダメ、ということはある。

◎ペットボトルのリサイクルについて、製品に処理費を添加すべきと考えるが?

⇒仕組みの組み立ての問題で、日本は自治体を利用したほうが有効と判断したのではないかと考える。

◎プラスチックは燃やしても安全と資料に書いてあるが、塩ビは燃やすとダイオキシンが出る。塩ビの使用や塩ビの製品を減らそうという動きは業界の中にあるのか?

⇒プラスチックを燃やした場合の有害ガスというのは塩化水素である。焼却場から排出される塩素ガスの半分は、塩素系のプラスチックであるというデータは持っている。しかし、これを取り除く除去設備は技術開発が終わって実用化され、使われているし、塩素ガスを外に出している焼却場は今はない。また、業界では塩ビとダイオキシンをすぐには結び付けていない。きちんとした設備で燃やせばダイオキシンは出ない。困っているのは、技術的に確立されているのに、古い施設が最新の設備を備えた新しい施設には今すぐ移行できないので、行政が苦労していること。

◎生分解性プラスチックの研究については、どう考えているのか?

⇒生分解性プラスチックの研究は進んでいるが、このプラスチックがプラスチックの持つ機能を、全て満足させるというのは無理。また、分解すればCOになることは同じで、ここ数年のプラスチックごみの問題を解決する方法とはならないが、今後検討していく。

◎1回目のリサイクルしただけで捨てられるものはリサイクルではない。プラスチックのリサイクルという意味についてどう考えているのか?

⇒プラスチックはもう一度同じ商品には戻せないので、形を変えて再商品化したいと、一生懸命やっている。ペットボトルや白色トレイは同じ材質ということで、マテリアルリサイクルが行われているが、ペットボトルからペットボトルにはできない。本来はペットボトルからペットボトルとしたほうがいいが、衛生的な問題などクリアしなければならないことがたくさんある。マテリアルリサイクルができないものについては、原料に戻すなどケミカルリサイクルをしていくしかない。形を変えてでもリサイクルしようということになっている。

◎協会の公式見解は、プラスチックを燃やしてダイオキシンが出てもたいしたことはない、ということなのか?

⇒今はまだ、プラスチックを燃やすこととダイオキシン発生の相関が取れていない。今の状態では何を燃やしても、燃やし方が悪ければダイオキシンは出る。

◎同じ素材から同じ素材へと循環していく方向がベストと考えるが、プラスチックの種類を大幅に減らす、種類をほんのいくつかに限定する、というのは不可能か?

⇒プラスチックは機能の要求が強かったから一つ開発されて多種になったわけだが、例えば、今、家電製品メーカーの中には、同じプラスチックに統一しようと話し合われている。しかし、その商品が使用に耐えて安全に使われていくかどうかは分からない。

(リポート:三市ごみ連絡会事務局)

 

◆□◆小平市の取り組み◆□◆

講師:藤原 哲重 氏(小平市リサイクル推進課課長補佐)

開催日:1999年10月3日(日)

 プラスチックの焼却の問題、これからのプラスチック問題、そして容器包装リサイクル法にかかわるそのほかのプラスチックをどうするのか、ということについて、小平市が取り組んでいること、また、今後の対策と取り組みについてお話しします。

 

小平市の取り組み

 ごみは市町村が処理しなければならないと法律で決められている。プラスチックごみを過去はどうしていたかというと、(昭和50年ごろ)不燃ごみとして集め、衛生組合で破砕し、鉄分を取り出した後、埋め立てていた。残ったもののうち軽いものを4%ほど、焼却炉に影響が出ない程度に、試験的に燃やしていた(平成2年)が、その後プラスチックごみが多くなり、最終処分場の埋め立ても、平成9年で満杯になるという先が見えてきて搬入規制が規制が厳しくなってきた。

 そこで平成4年には、フィルム状のビニール類は燃やすことを、衛生組合と三市で申し合わせた。(固形物は埋め立て)そして、燃やせるものは燃やすようにという最終処分場からの指示もあり、平成5年から破砕した軽いものは全量燃やすこととした。ただし、市民への広報は、今まで通りプラスチックやビニール類は不燃ごみとして回収することとし、市民に対しては説明会などでご理解を頂こう、それしか方法がない、ということになった。

 マテリアルリサイクルがベターなのは分かっている。それには製品を一つ一つ分けなければならないが、プラスチックはいろいろなものの複合物なので、市民にとって分けるのは難しい。今は燃やすしかない。将来どうするかは別の問題。

 衛生組合は平成18年度に施設の建て替えを計画しているが、この焼却場を建て替えるのに前提となる条件を作るために三市はごみゼロプランを策定した。この中で、焼却施設はできる限り今より小さくしよう、焼却したとしても単純焼却ではなく、熱利用するサーマルリサイクルをしようという方向で考えている。

 また、排出抑制のため33.2%のリサイクル率を目標とし、平成8年度のごみの総量を超えないようにする。現在、焼却場に入るごみは減っているが。リサイクルセンターに入ってくるものが増えている。総量はそれほど減っていない。

 心配なのは小平市から資源として出ていったからOKではなく、その先で、ちゃんと環境を配慮したリサイクルがされているかも見ていかなければならない。また、今の焼却施設は転換対応ができない。一度つくったら20年は変えられないから、20年先はどうなるのか、システムはどうなるのか読めない。市町村としても切り替えのできる施設を考えていかなくてはならない。

 プラスチックについては、容器包装リサイクル法もにらんで分別収集計画を都に出した。小平市は来年度、ペットボトル以外のプラスチック容器を54tモデル地区を定めて分別収集する計画。その他のプラスチックは非常に難しい。

 リサイクル法に基づく市町村負担金が決まった。現在ごみ処理費用はtあたり4万円、リサイクル費用は3.9万円必要で、その経費の問題もある。中小企業の負担分を市町村が負担しているが、これはメーカーが負担してほしい。リサイクル法は有料化して各市で賄えと示唆している。

 三市共同で方向性を決めたらまた、市民に説明会をしたい。

質疑・応答

◎ごみの有料化は野焼きが増えるのではないか?

⇒焼却する事業者が増えるだろう。焼却を制限する方法ができればよいのだが。

◎不燃ごみは、どういう方法で燃やしているのか?

⇒焼却温度管理をしながら、可燃物が少ないときに混ぜたりしている。

◎小平市のプラスチック収集54tは白色トレイだけか?

⇒トレーも入っているが、トレーだけではない。たぶんボトル類だけになるだろう。3年間実験的にやる。平成18年度以降どうするか考えている。

◎分別収集するプラスチックは梱包時、熱をかけるのか。また何かが出るのではないか?

⇒梱包時、熱は加えない。水処理が必要になるかもしれない。

◎焼却炉の建て替えについて100t以下でも補助金がでるようになったが、組合はどのように考えているのか?

⇒ごみ量は100t以下にはならないだろう。できるだけ小さい炉をいくつか設置して、フル稼働することになるだろう。

◎最終処分場では、灰の中に乾電池が入っていると、搬入を認めてもらえない。灰の中から異物を取り除く作業を手作業でやるというのは、作業員の健康面について、それで安全なのか。

⇒非常に心配している。小平市は資源の回収方法を変えたら乾電池が80t集まった。市民一人一人の意識、分別徹底をしていかなければならない。

◎プラスチックの軽いものを燃やしている実態を変えられないか?

⇒プラスチックを今後どうしていくのか、もっと検討が必要。例えば、容器包装の日とか、プラスチックの日とかを設けるとか、その他プラスチックについては容器包装法にのらずに、メーカーとタイアップして高炉に持ち込むとか、将来的にプラスチックにどの程度まで取り組めるか考えている。

◎生ごみのリサイクル、堆肥化をどう考えているのか?

⇒三市とも具体的な計画は持っていない。各市で減らす取り組みをしようとはしているが、合同の生ごみプラントなども考えられるが、統一的なところは決まっていない。

◎乾電池は、その出る量からいっても販売店(売った所)が回収できないのか?

⇒販売店が回収しても、市の収集に出してしまう。拠点回収システムをもっと研究したい。

(リポート:三市ごみ連絡会事務局)

 

◆□◆プラスチックごみ減量は、ここまでできる1◆□◆

講師:犬伏士郎(東芝青梅工場環境保全担当グループ長)

開催日:1999年12月12日(日)

 

東芝(電機メーカー)としてのリサイクル・再資源化の取り組みを紹介します。

環境負荷

 製品を作るために、工場内でどのような環境負荷があるか。

@環境負荷概要

大気汚染:排ガス量   13,888Nm/H

水質汚濁:下水排出量      306t/年

廃棄物:           1,491t/年

規制物質:鉛半田 5.51t/年 IPA 19t/年

Aエネルギー使用量

電力: 2,109MWH/月 全体の90%

都市ガス: 9,55立方メートル/月  全体の2%

重油:        全体の8%

LPG

B工場の特徴として

・海外マーケットとの関係が深い。

・開発設計の比率が高い。

・製品開発工期(ライフサイクル)が短い。

・製造工程は組み立てが中心

・製品取り扱い数量が多い。

環境保全活動のあゆみ

 活動が活発化したのは、1988年から(工場内に組織体制を整備)、また、1995年にはBS7750というイギリスの環境認証を受けており、早い段階から国際的な認証制度を取り入れ、活動を強化してきた。

 東芝青梅工場は、「東芝グループ経営理念」(スローガン:人と、地球の、明日のために)及び「東芝環境保全基本方針」に基づき、「東芝青梅工場環境基本方針」を制定し、社会に公表している。

環境保全体制

 工場長を最高責任者として、環境管理責任者に生産技術部長を置き、工場内全部門を製品ごとのユニット単位とし環境保全活動に取り組んでいる。専門の高いものは専門委員会を設けている。

廃棄物削減とリサイクルの推進

 90年のデータベースにして、対90年比で最終的に廃棄物をゼロにしていこう、というのを目標にして進めている。

 90年では1,137tあった廃棄物が98年には111tになっている。

◎1998年度廃棄物発生状況(埋立・中間処理)

(埋立処分 39t)

 廃プラスチック24t(分別しづらいもの)

 廃文房具・皮革類6t、乾燥剤6t、その他3t

(中間焼却処理 72t)

 紙ごみ 24t(汚れていてリサイクルできないもの)

 生ごみ 22t(一部は養豚業者へ)

 草木屑 12t、食品包装屑 10t、その他 4t

 再資源化率は、90年度12%だったものが、98年度は93%となった。

 現場では、約150種類ぐらいの分別をしているが、その主なものをあげる。特にプラスチックの分類については、再利用できるものはする。容器類などは洗ってメーカーに返す。再利用できないものはリサイクル室で一次減容(破砕、圧縮、減融)したのち、固形燃料メーカーに引き取ってもらう。そのご、専用の炉を持っているセメントメーカー、繊維メーカーで助燃剤として使用している。ビニールシート類や緩衝材となる発泡スチロールは大量に出るので、総量を少なくするために、何度も使うことにした。プリント配線基板の端材も設計改善で削減した。また、製造ででる廃棄物削減の取り組みとして、部品供給は使い捨て容器ではなく通い箱を使用する。部品も一つ一つ袋に入れるのはやめる。ダンボール箱は何回も使う。

環境設計への取り組み

パソコンを中心に、グリーン工場に向けて環境調和型製品の創出のための取り組みについて、環境設計アセスメント(事前評価)を実施している。

 製品のライフサイクルの各段階(原材料調達、製造、流通、消費、廃棄)における環境負荷の低減と今後の取り組んでいくテーマとして、

・エコマテリアル・・・リサイクル材の活用

・鉛フリー(鉛レス)の半田の創出

・ハロゲンフリーのプリント基板・・・難燃剤としてハロゲン系の物質を使わない

・省資源化設計(省エネ)・・・捨てられた後のリサイクルを容易にするために、有害物質を少なくし、また、解体しやすいようにネジの共有化やビスをなくす。

・適正処理・・・管理的なこととしては埋立処分場など最終処分の状況を、実際に処理している現地を確認するなどの監視をしていく作業

 工場としての今後の課題はやはり、ゼロエミッションが究極の目標。製造段階では、廃棄物のゼロ化、埋立ごみのゼロ化。製品面では、廃製品の回収、リサイクルシステムの構築など。

パソコンリサイクルの取り組みについて

 背景として、98年6月成立2001年施行の家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)がある。今は、パソコンは対象になっていないが、いずれ適用されるものと見込んで、製造業者としてどんな役割がかかってくるのか、家電リサイクル法における機器の廃棄の流れを予測し、回収体制をきちんととる、リサイクルしやすい機器をつくることを重要なテーマとして活動している。さらに、引き取り、最終処理、再商品化など中枢的な役割を担うシステムの構築を検討していく。

1パソコンの収集台数の予測(パソコンの寿命を7年間として算定した場合)

・全国で2000年、約13万4千台

・全国で2003年、約58万台

  (どっと回収されるようになる)

・関東地区の排出量は、このうち65%

2パソコン収集リサイクル処理計画

◎基本となる目標

 製品を売った後、捨てない、埋めない、燃やさない、なおかつ顧客に心配をかけないという「環境リサイクル理念」のもと、パソコンの収集、処理を計画的に行っていく。自治体など他の機関とも連携し、きちんと回収していきたい。当面、対象となる商品及び顧客としては、法人向けノートパソコンを1999年10月から取り組み始めている。できるものから、ということで法人ユーザーの場合は、顧客が特定でき、機器の流れが比較的わかりやすいので回収しやすい。

◎リサイクルのしくみ

・パソコン処分品の流通経路

 企業ユーザーに対するリサイクルとして、廃棄の窓口として対応する。

・管理表(マニフェスト)とリサイクル費用の流れ、ユーザーのマニフェストを確保して、リサイクルセンターで廃棄を確認する。

・リサイクルセンターの体制

 現在、部品ごとに手解体をしている。リサイクル率の向上を目指す。

・パソコン廃棄数量の予測に基づいて、全国の回収拠点で、リサイクルを図っていく。2001年からは企業ユーザーだけでなく、一般ユーザーを含めた総合的な回収のしくみにしていく。

◎2001年4月に向けての課題

・パソコン以外の対象商品の拡大と顧客の拡大

・処理コストの削除

・リサイクル率の向上

◎パソコン解体分類とリサイクル方法

・すべての部品ごとに素材別にリサイクルし、最終的には100%を目指す。

例)ニカド電池のリサイクル・廃蛍光管のリサイクル(ガラスカレット、水銀回収)・被覆電線の中の銅の回収・廃プリント基板のリサイクル(銅・リン・金などの回収)

・廃プラスチックのリサイクル

パソコンに占めるプラスチックの割合が高いので、プラスチックのリサイクルは重要テーマ。ようやく実証段階にまでこぎつけ、ほぼ工程的に50%ぐらいまでめどがついてきたが、100%リサイクルは難しい。

質疑・応答

◎廃棄物は今後どのくらいまで減少する見込みか?

⇒今すぐにでも、サーマルでならゼロにできるが、安易に焼却にまわしてゼロにするのではなく、適正なリサイクルを、もっと項目別に考え、時間をかけて方向づけていきたいと考えているが、2003年には、その展をクリアしてゼロにしたい。

◎電池や蛍光管のリサイクルは工場内のものか、外で使用されたものか?

⇒法人ユーザーから回収したものを、手分解でやっている。もちろん工場のものも同様にやっている。

◎売上高エネルギー原単位の低減という取り組み項目の具体的目標として、2000年度に90年度の55%削減とあるが、この取り組みによってどのくらい利益が上がったか?

⇒コスト的効果は確かにあるが、数値として出していない。環境会計の取り組みも行っており、その結果を今後報告書に載せるようにしていきたい。

◎家電製品は修理してほしいと思って量販店に持っていっても、修理するよりも新品を買ったほうが安い、と言われたり、機種が古いと部品がないなどと言われることが多々あるが、メーカーはどのように考えているのか?

⇒家電リサイクル法に施行にともない、製品のリュースを大きなテーマとしてあげている。同じ製品を長く使ってもらおうと「グレードアップサービス」や修理の体制づくりを進めている。メーカーと販売業者とは市場のメカニズムとの関連もあり、リュースという市場が未整備なのも確かだが、リサイクルの観点からメーカーとしてもリュースに取り組む。

(意見として、消費者も物を買うときは、よく考えて買うべき)

◎法人向けパソコンの回収を始められたとのことだが、個人で持っているパソコンをメーカーに直接持っていけば回収してもらえるのか?

⇒東芝としては、パソコンはリサイクル法の対象に入っていないが、2001年から回収を始める。回収ルートがあり、直接引き取れない。また、機種の新旧で引き取り価格が違うということはないと思う。

◎リサイクルする際に、下請け会社などの環境管理はどうされているのか?

⇒関係会社や取引先など幅広いが、一体となった環境保全の推進を行っている。また、グリーン調達の中で、各メーカーのレベル評価をしてから取引をしている。ただし、リサイクル会社がどういう管理をしているかは分からない。

◎パソコンの法人向けのものと一般向けのものとの比率は?

⇒2003年の予測数値では、法人30万台、一般10万台で、3対1の割合。

◎テレビのリサイクルなど、他社製品の部品を使っているものでもリサイクルに支障はないのか。また、東芝のような動きを他社もしているのか?

⇒電気関係の大手メーカーは連携体制をとっている。どこのメーカーでもすぐに運用できる体制になっているので問題ない。

◎他社製品の引き取りも可能なのか。また、他社メーカーと廃棄物の処理、リサイクルに関して協議をするなど、ネットワークはあるのか?

⇒小売店が拠点になるので、回収する際メーカーは問題にならない。また、回収は二極になっており、どこのものでも引き受けることになる。

◎新しいものを買わなくても回収するのか?

⇒買うことが前提にはなっていない。買わなくても回収するが、有料になる。

◎生産高が落ちているのに、エネルギー使用量が増えているのはなぜか?

⇒新機種開発のため製造施設そのもののレベルから先は、絶対量としてこれ以上増やさないよう管理していこうということになっている。

◎東芝内で直接行われているリサイクルは何か?

⇒中間処理として、手分別の一次処理のみ行っている。地方にある工場では敷地内にリサイクル関連会社を誘致しようとしているところもあるが、現段階では最終処分は全て外部へ出している。

最後に、工場の見学はいつでもOKです。

(リポート:三市ごみ連絡会事務局)

 

◆□◆プラスチックごみ減量は、ここまでできる2◆□◆

講師:増岡 豊樹 氏(いなげや環境対策推進プロジェクト事務局長)

開催日:1999年12月12日(日)

 

 スーパーいなげや(創業100年・120店舗中半分が東京にある)の環境問題への取り組みについて紹介します。

 流通小売業環境対策の現状と評価より、環境にやさしい店94年の評価…21位、98年の評価…14位

環境対応推進プロジェクトについて

◎関連会社4社といなげやで、一昨年できた。

・環境にやさしい

・廃棄物を少なく

・ごみをなくる、を目的とする。

◎バリアフリー店をつくる

◎環境報告書を作成して公表する

◎容器包装リサイクル方への対応

◎いなげや自店内の休憩室のごみは5分別

事業系廃棄物の現状と対策

 廃棄物総排出量のうち、リサイクルされないで焼却される可燃物は11.017tある。2002年2月に施行される法律により、この中の食品廃棄物(生ごみ)の1割ないし2割をリサイクルしなくてはいけなくなる。(12/1の新聞発表)

 立川市幸町店に生ごみ処理機(消滅型)を置いて約2ヶ月間実験したが、生ごみ処理は分別と言う大変な作業があり、すべての生ごみというわけには行かない。この法律を乗り切るには、大規模な生ごみ一次発酵プラントをつくらなければ無理。

各種リサイクルの現状と対策

 廃棄物総排出量のうち、リサイクルされているものに、段ボール箱・発泡スチロール・びん・缶・身あら(魚の飼料にする)・廃油がある。

◎店頭回収リサイクル

・店頭回収の困り者=利用者のマナーの悪さ、回収ボックスが出ていかない店が休みのときでも置いていく。

・リサイクルできないペットボトルもある。(色がついたもの・ラベルが糊づけされたもの)

・ボタン電池。ニカド電池は回収システムがあるので、今3店舗で回収実験中。

◎紙のリサイクル

490店舗で実施。発注台帳、案内板、記録紙、伝票の4種類に分けて9月から始めた。1店舗で80kgから120s、1ヶ月で8t、年間で100t近くの紙ごみを燃やさないで済むようになった。

その他の取り組みについて

◎グリーン調達への取り組み

 リサイクルや環境に配慮した商品を、事業活動する中で使っていこうとする位置付けのもの。

・トイレットペーパー    古紙100%   116 千ロール

・ペーパータオル     牛乳パック50% 631 千枚

・コピー用紙A4     再生紙70% 2,700 千枚

・レジロール紙      再生紙50%  375 千個

・POP用紙            6,500 千枚

・チラシ       古紙50% 180,000 千枚

・EDP用紙      再生紙50% 1,200 千枚

・プリンターカートリッジ   リサイクル 800 個

◎環境にやさしい商品の品揃え

 いなげやは、プライベートブランドを持っていないので、他社商品で対応している。

・資源の有効利用の詰め替え商品

 シャンプーリンスや洗剤…84品目

・リサイクル商品

 トイレットペーパー等…45品目

・環境にやさしい商品

 純石鹸や有害物質を発生させない素材…22品目

 成長の早い竹や間伐材使用の箸など…7品目

・健康・安全・安心をテーマにした食品

 「有機農産物」や「有機栽培」の原料使用の納豆や豆腐・味噌等

◎リデュース(もとから減らす取り組み)

 買い物袋は、全店で900t必要だが、2ミクロン程度薄くすることで73.5t削減でき、その分利益もあった。

 通い箱を推進し、使い捨て段ボール箱使用にすると、年間で9.405tの削減となった。

買い物袋持参でお買い物

 いなげやが用意している買い物袋を900t削減できるということは、それだけプラスチックごみを社会に撒き散らさないで住むということにもなり、費用効果も出てくる。その分をお客様に還元できるので、マイバック推進の検討を真剣にしている。

99年11月現在では、参加率6.5%となっている。ちなみに三市にある店舗のマイバック参加率の状況は以下のようになっている。

・東大和市…2.3%   街道団地店…9.1%

・武蔵村山市…5.9%  西村山店…4%

・残堀店…3.5%    学園西町店…5%

・小平天神店…5.8%

質問・応答

◎商品にトレイを使わない、ペットボトルをやめてビンにする、容器を持っていけばそれに入れてもらえる、というような発想はないのか?

⇒企業活動する上においては、「ニーズがあるから提供する」のが大前提としてある。売っているのではなくて、買っていただいているという意識である。しかし、プラスチックトレイを使わないでいいもの、例えば、野菜はバラ売りにしたり、紙のトレイに変える努力はしていく。家庭ごみを減らすことを目的に、やります。

◎武蔵野西久保店を利用しているが、いくつかの要望があります。(・はかり売りを検討してほしい ・チェーンストア協会でマイバックの提案をしてほしい。 ・塩ビラップを売っているが、そうでないものを置いてほしい) 質問として業務用ラップの材質は何か。

⇒塩ビラップは今のところ良く売れているが、3種類のポリラップも置いて、販売促進もやっている。業務用ラップは塩ビを使っている。近々変えていきたい。非塩ビラップの使用を今、5店舗で実験中だが、一気に変えられない理由として、コスト高の問題、水に弱い(強度がない)、商品をラップがけする機械を変えなければならず、そのコストの問題、などがあるが、変えていく努力はしていく。

◎レジ用紙は感熱紙だと思うが、リサイクルしているのか。また、売れ残り品はどれくらい出るのか。

⇒感熱紙は禁忌品だが、リサイクルしている。売れ残り品は、不正につながるので、全部捨てている。パンが一番多く残る。

◎マイバックについては、レジで「袋お持ちですか」と声掛けをすると効果があると思うがどうか? また、塩ビラップは是非なくしてほしい。ある店では環境にやさしい品物を店頭に並べてアピールしているところもある。

⇒マイバックは、いなげやも検討しているが、まだ声掛けまでは踏み込めないでいる。

◎ペットボトルは売らないを基本に、小売店でも努力してほしい。また、ボタン電池を燃えるごみに出してしまってよいという話があったが、日の出で焼却灰の中に電池が入っていて持ちかえらされた。なぜか?

⇒ペットボトルは350mlのものを作ろうとしているメーカーまである。メーカーの問題でもある。燃やす燃やさないの問題ではなく、行政が引き取らないことが問題。きちんと回収すべきだろう。

(リポート:三市ごみ連絡会事務局)

 

◆□◆SONY ECO PLAZA◆□◆

開催日:1999年8月30日(月)

 

ソニーのリサイクル技術

 恵比寿のSony本社内にあるSony eco plazaの見学会が行われ、残暑の厳しい中、十数名が参加しました。

Plaza内にはソニーが開発したリサイクル技術や商品が3コーナーに分けて展示してあり、係りの方から説明を受けながらの見学となりました。研究開発コーナーでは開発技術を実際に実験を見ながら理解できるようになっており、例えば、「リモネンを利用した発泡スチロールリサイクルシステム」としてオレンジの皮に含まれる物質であるリモネン(液体)に発泡スチロールが溶けていく様子を見た他、廃ビデオテープ等のプラスチック部分から作った凝集剤を使って工場排水中の懸濁物質を沈殿・除去する様子などが視覚的に見られたのがおもしろかったです。その他、リサイクルしやすく設計された製品や、再生紙を使った包装材などの展示があり、普段知る機会の少ないメーカーの環境への取り組みを知ることができました。

感想

 廃棄物のリサイクル技術的にはかなり研究が進んでいることがわかりましたが、見学全体を通して課題と思ったことは、廃棄物となった製品の回収システムがほとんど確立されていないということです。これでは処理技術を生かせないばかりか、主目的のごみの減量にはつながらないので、今後、回収システムの確立に力を注ぐことが重要であると感じました。

(リポート:土橋享子)

 

◆□◆鞄。総業 廃棄物処理場◆□◆

開催日:1999年12月14日(火)(長野県小諸市)

 

乾電池処理施設

 長野新幹線で1時間20分、寒気の厳しい、換算とした佐久平駅に降り立ったわれわれ見学会参加者は、簡単な昼食を済ませてからタクシーに乗って、カラスが上空に多数乱舞して不気味に感じられた廃棄物処理施設の鞄。総業へと向かいました。

 林や畑に囲まれたTDK研究所の先に、廃棄物処理施設としては私がイメージしていたよりも、意外と清潔な感じを受ける建物が鞄。総業でした。事務所で会社の事務内容をVTRをふくめて説明を受けたあと、処理工場に案内されました。

 目当ての「乾電池破砕選別装置」は稼動していませんでしたが、北海道の野村興産とは異なった処理方法の処理プラントで、回収された廃乾電池を破砕しその中から鉄屑、プラスチックなどを選別し、残渣をコンクリート化する工程との説明を受けました。

 また「蛍光管・水銀処理装置」では、一部小型処理装置に作業者が直管を一本一本装入して、破砕選別している稼動上級を見学できましたが、本格的な破砕・選別・洗浄・乾燥処理の自動装置は停止していました。いずれも口金とガラス部分を切り離し、ガラスを破砕、洗浄し再生ガラスとし、中の水銀ガスを吸着する装置です。人は蛍光管を装置に装入すること、口金を集めることなどの単調な作業を黙々と続けていました。

 これらの処理プラント技術は既知のものですが、リサイクルされる部分を除いた残りの破砕物を20%の特殊セメントと薬品を均一に混練する処理プラントは独自のものであり、管理型最終処理場の埋立地を持っているところが、リサイクルコストでも鞄。総業が野村興産の競争相手となることができた理由と思われます。しかし、処理プラントが継続して稼動できるだけのリサイクル資源が回収できるのか、最終処理場が確保できるのか疑問が残るところです。

 ペットボトルの処理は、切断しラベルを取り外し、粉砕する工程がありますが、材質別の選別を切断工程の前に人手でやっていました。

 このように書く処理プラントに働く作業者は、いわゆる3K(汚い、危険、きつい)であり、外国人、心身障害者の姿も見られました。

感想

 問題として感じたことは、処理施設の3K職場で人手の大部分の仕事が、回収された資源物をリサイクルが可能にするために、処理前に必要な選別作業であるということです。このことの解決のためには、メーカーが再利用、再資源化できる製品づくりをして行かなければ、企業として存続が出来ないような厳しい環境作りと、リサイクルシステムの構築のために、住民・行政・産業界・学会等の弛みない努力と協力が必要だと感じました。

 厳しい寒さの中の工場見学でしたが、工場側のざっくばらんで素朴な態度に接し、有意義な一日を過ごすことが出来ました。学習会幹事のご苦労に感謝いたします。

(リポート:成田延雄)

 

◆□◆ごみと水を考える◆□◆

講師:瀬戸昌之氏

開催日:1999年6月12日(土)

 

概要

今回の瀬戸昌之氏の講演では、前半部分では環境問題全般の話とめったに聞けない微生物についての話を、後半部分では環境ホルモンとごみ問題についての話を聞いた。特に、水環境についての話や微生物の話が、新鮮だった。この報告は、環境ホルモンについては他にも多くの情報や文献があると思われるので、それ以外の部分を中心にまとめてみた。(文章作成者高野研一より)

1.環境問題を考える時にどういう視点が重要なのか

■人間と自然環境にかかるストレスが増大している

 日本は世界に冠たる工業国であるが、現在どのような問題を抱えていて、これからどのような問題に直面していくのだろうかを考えてみたい。まず、日本の農業の破壊が挙げられる。水田の持っている広域的な価値(国土保全に重要な役割を果たしている)を無視して、特に中山間地の機械化が入りにくい水田を次々に休耕していること。次に、都市への一極集中(人口の85%が都市に)が激しすぎるという生活問題がある。そのため、犯罪の増加等の様々なストレスが増大している。また、エネルギー問題では、これからも化石燃料や原子力に依存する方向にあることが問題だ。この方向では、環境の破壊や汚染の激化が続くだろう。それから、国際関係の問題では、他国への介入や利害の対立が強くなる傾向にある。この傾向は、世界的な緊張の激化を呼び、直接的には人類生存の危機を、間接的にはインフレーションや産業や都市の空洞化を引き起すと思う。この様に上記のような多くの問題が、人間や自然環境へのストレスを増大させている事を、認識しておく必要がある。

■「経済効率」の内容を検討すると…

ここで一つ主張しておきたい事は、今日本はなんでも「経済効率」というが、この「効率」はアンフェアであるという事だ。全体としては、目先の利益に執着して、長期的に見ると多くのものを失っているやり方をしていると思う。とりわけ、工業の経済効率は農林業の経済効率より1500倍も勝っているという人がいる。しかしその内容を検討してみると、工業の経済効率も農林業の経済効率も、費用を投入して生産物の価値をえる事は同じだが、工業の経済効率には運転に伴う環境修復費用や製品の廃棄時の処理にかかる費用は入っておらず、これらの費用は社会的費用として位置付けられているし、農林業の経済効率には国土保全に貢献しているという広域的価値を無視している。このようなデータで計算する為、工業の方が農林業よりも経済効率が高くなる。この様に、今の経済は、目先の効率で動いていると思う。

■個人は自然環境なしでは生きていけない

 私は、環境問題は自然科学の問題ではなく、社会の問題だと思う。そもそも、個人の環境は二つある。自然環境と社会環境である。個人は自然環境の中で生きていると同時に、個人は社会に強く縛られている。ごみ問題では良く「ライフスタイルを変えろ」と言われるが、社会のあり方を変えずに個人のライフスタイルだけを変えるには限界がある。また、最近の文明の発達で、人は自然から離れて生きていけるかのごとき錯覚を起こしやすいが、人は自然環境や社会と一体であり切り離す事はできない。そのため、環境問題は、考える事を止めて離れていられる問題ではない。

 自然環境と社会・産業は相互に影響し合い、個人はその中で生きている。この全体を有機的な関わりの中で捉えていかなければならない。私の考える「教養」の定義とは、個人の生活は社会・自然環境に支えられていることを知り、社会・自然環境のために何ができるかを考える事である。

■一方通行の都市の生態系

 自然の生態系を一言で表すと「物質循環が完結している」と言える。緑色植物が光のエネルギーで無機物から有機物を合成し、微生物が無機物に分解する、その無機物を緑色植物が…というサイクルで自然の生態系は成り立っている。太陽から得られるエネルギーを利用して、有限の資源を繰り返し使っているのである。一方、都市の生態系は、石油やその他の資源を外から持ってきて、都市の中でエネルギーとして使い、製品を作る、その後各種のガスや廃棄物を出す。この様に、物質循環は完結していない。都市は、石油やその他の資源が枯渇すると崩壊するが、それよりも、排出し続ける炭酸ガスなどのガスや廃棄物の方が愁眉の問題ではないかと思う。CO2・地球温暖化の問題では、世界中の国が日本並に工業化すれば、地球は年単位で崩壊に向かうだろう。

2.微生物について

■微生物は重量的にも種類的に非常に多い

今この瞬間も、私達は息をするたびにカビの胞子やその他の微生物を100個や200個は吸っている。しかし、何も心配する事は無い。私達は微生物と一緒に暮らしているのである。さて、地球上には重量的に見て植物体が最も多く、微生物の10倍くらいである。植物の中でも生きている部分は葉と皮の部分だけであるが、それらと微生物では同じくらいの重量になる。それに比べて、全ての人間を合わせた重量は、微生物の重量の2000〜1000分の1にしか過ぎない。重量的に見て微生物は人間の1000〜2000倍いるのである。家畜は人間の4倍、野生生物は数値にしにくいくらい少ない。人間とその他の動物は、植物と微生物のキャッチボールという自然の営みの中に育まれて生きているのである。また、微生物の種類は凄まじく多い。

■微生物の定義とは

 微生物の定義は簡単だ。その名の通り小さい生物、「0.1ミリ以下の生物」である。0.1ミリとは、人間の目では点としてしか認識できない大きさの事である。つまり微生物とは、人間の目では点としてしか認識できない大きさよりも小さい生物の事なのである。ちなみに、バクテリアは1ミリの1000分の1の大きさで、ウイルスはさらにその100分の1という大きさだ。

■色々な種類の微生物

 それでは、いくつかの微生物について見てみよう。まずは、サルモネラ。こいつは、毛を持っていて動き回る事ができる。人間くらいの大きさだったらと仮定すると、100メートル走でカールルイスに勝つほど運動能力に長けている。また、鶏肉や卵の表面にくっ付いていて食中毒を起こす。つぎに、スタフィロフォッカスオブレウス。こいつは、球菌で抗生物質がきかない。どうすればいいか、抗生物質を止めればいい。人間の大腸の中には約100グラムの大腸菌がいる。抗生物質を飲んで大腸菌がへたばった隙に、こいつが入り込んで悪さをするのだ。他にも、カビ、イースト菌、クロレラ、ゾウリムシ、ケイソウ、アメーバなど。アメーバを家とすると、スタフィロフォッカスオブレウスは人間の爪くらいの大きさである。こいつら全てに共通するのは、家くらいの大きさの奴も爪くらいの大きさの奴も一個の細胞であるということだ。次に、O−157。こいつは、大腸菌に赤痢菌の毒素遺伝子が入ったものだ。本来、大腸菌はごく無害で人間と共存している。居なくなると他の菌が入ってきてむしろ危ないのだが、O−157は大腸菌なだけに困った存在だ。他にも、色素持って泳ぎ回るユウグレナ、活性汚泥の中にいてバクテリアを食べながら分裂するロンリセラ、大腸菌を食べて分裂するせん毛虫、様々な赤潮を起こす微生物、ケイソウ赤潮、アメリカのノースカロライナで問題になっていて魚を殺し人間にも神経毒を与えるウズベンモウソウなどがいる。また、実はふぐの毒は、海のバクテリアが作ったもの。それがふぐに濃縮されているのだ。

最後に、最近では遺伝子組み替えで作ったスーパーバクテリアで環境汚染を浄化するということに注目が集まっている。バイオテクノロジーの先端である遺伝子組み替えには多くの過程がある。遺伝子を探し出す、遺伝子を組み込む、生物を作る、遺伝子を安定させる、能力を働かせる、バイオハザードを起こさない事を確認するという複雑で費用のかかる作業が必要になる。しかし、良く分析してみると汚染物質を分解する様々なバクテリアがいるのである。それらは、リンがいる、窒素がいる、何か他の物質がいるといった注文をつけるのである。スーパーバクテリアに期待するよりも、ローテクではあるかもしれないがそれらのバクテリアの生態学的制約を知り、それらを働かせるようにしていく方を、私は研究している。

3.大型公共事業を含めて、ダムや河口堰の問題を

■日本の水事情

日本の水環境において重要な事は二つある。降水の季節的な偏りがあり、国土が急峻である為、洪水害が起こりやすい。そのため、どうやって洪水を防ぐかが第一のポイントである。第二は、農業・工業・生活用の各種用水を確保すること。この二つは、水行政においても最も重要である。第一の洪水対策の中心は、いかに降った雨をためておいて時間をかけてゆっくり流すかという事だ。この事を流出の平準化というが、その洪水調整機能を比較してみると、治水ダムが24億トン、水田はその3倍くらいの68億トン、森林はそれをはるかに凌ぐ444億トンとなっている。これを見ると、水田や森林があるからこそ、日本の急峻な国土であっても洪水がそんなに起こらないですんでいる事が分かる。とりわけ、中山間地の水田が洪水・治水において非常に重要な役割を果たしている。第二の用水の確保では、年間の用水必要量が910億トンであるのに対して、ダムの貯水量は200億トンである。これは、3ヶ月も雨が少ない時期が続くと足りなくなってしまう事を意味している。何故これで足りているのかというと、水田や森林が雨を飲み込んでゆっくりダムに流し込んでいるからである。日本の水行政は公共事業をやる事しか頭に無いが、この様に非常に大きな役割を持つ水田や森林の価値を認識して欲しい。

■地下水には優れた価値がある

 実は、治水対策に於いても用水の確保に於いても、鍵を握るのが地下水の利用である。用水の確保を例に取ると、関東平野には4000億トンの地下水が存在している。全国の年間用水必要量が910億トンなので、上手に使えば地下水だけで用水の確保ができるくらいの量がある。しかし、地下水を大事にしようという考えが建設省から出たことが無い。そのため、地下水はトリクロロエチレン他で軒並み汚染されているのが現状である。

本来、土壌によって浄化され、さらにミネラルを供給された地下水は大変おいしい水なのである。環境庁の名水百選の80%が地下水であるというほどだ。また、地場産業の活性化や融雪の役割を果たすなど様々な価値がある。さらに、安い事も地下水の非常に優れた点だ。ポンプの設置、稼動費を含めた総合的な費用は、1トンあたり1円しか掛からない。最近では、雨水浸透施設をつかった水の染み込むまちづくりが始まっている。今後もこの様な施設を増やしたりする等、質が良くて安い地下水を大事にしていきたいものだ。

■大型公共事業は益よりも害が多すぎる

 長良川の河口堰では、どのような事が起きたのか。まず、建設の理由であるが、計画当初は工業用水の確保を目的にしていたが、既に工業界は水のリサイクルに成功しており工業用水は不要であった。ではどうしたかというと、この地域には昔洪水があったことを持ち出し、150年に一度の洪水に耐えられないから河口堰を造ると言い出した。ここに、一度決めた公共事業は何が何でも押し通すという建設省の姿勢が見られる。次に、長良川は、窒素やリン等の物質が多く含まれており、アオコが発生しているはずなのであるがアオコが発生した事は無かった。アオコはたまり水にしか発生しないのである。そのような状態の川に河口堰を造れば、たまり水を造るようなものである。当然、河口堰の完成の年にアオコが大発生した。そのため、魚が次々に死んでいった。また、河口堰完成から一年もすると、堰の近くにヘドロが1メートルもたまった。これでは、蜆などの貝類は生きていられるはずも無い。結局、8000億円もの税金を使った長良川の河口堰は、150年に一度の洪水を防ぐという名目で、長良川の環境を破壊し、漁場としての価値を無くしてしまった。この様な事例は数多くあり、公共事業は税金を無駄使いするためにやっているとしか思えない。

■希望はあるのではないか

 かつては、建設省は一度決めた事は覆さなかった。しかし最近では、初めて河口堰建設中止されたり、藤前干潟がごみ処分場から救われたり、三番瀬の埋め立て縮小の方向に向かっている。これは、今まで色々なところでがんばってきた人たちのおかげで世論が巻き上がって、皆が「何が起こっているか」分かってきたからではないか。これからは、もっと輪を広げて、不正を許さないようにする必要がある。

4.ダイオキシン・環境ホルモン、ごみ問題について

■環境ホルモンについて

 内分泌かく乱物質、通称環境ホルモンとは、ホルモン様作用をする物質の事である。現在約70種類ほど発見されており、ノニルフェノールと鯉、有機スズとイボニシ、ダイオキシンとモルモットやアカゲザルなど環境ホルモンの影響がどのようなものか、が分かってきた。特に、ダイオキシンは毒性が強く、多くの影響を人間は受けているようだ。なぜなら、ダイオキシンは主にごみの焼却によって発生するからである。これらを減らす為に、厚生省は高温で連続して燃焼しつづける大型炉を導入することが望ましいと考えているようだが、それには多くの問題がある。

■カドミウムがこれから問題になるだろう

 一時期問題になって今はあまり注目されていないカドミウムであるが、これから問題になっていくであろうと思われる。日本人は腎臓の中の腎皮質におけるカドミウムの濃度が欧米人と比べると数倍高いのである。また、カドミウムは少ない量でも生物濃縮され、さらに骨に沈着していく。日本は、世界で一番カドミウムを消費していて、ニッカド電池を始め色々な物に使われている。一部はリサイクルされているようだが、もし廃棄時に焼却されているならば、カドミウムなどの重金属は気化して出てくる。そのため、今後も焼却処理を拡大していくならば、蛋白尿が出るなどの危険なレベルに達してしまうだろう。

■欲望の増大と「豊かさ」

 ガルブレイスの有名な言葉に「豊かな社会は富が増大することで実現することができない。」とあるが、その言葉の後には次の言葉が隠れている。「人の欲望はコマーシャル等によって限りなく増大させられる。」この言葉は、まさに今の日本に当てはまる。今の日本には、「足るを知る」という雰囲気を作る動きは組織だって無く、「いかに購買意欲を掻き立てるか」という働きかけに満ちている。電通PRセンターに主導されて、需要は作られているのである。

面白い事を行った人がいる、「豊かさ=財/欲望」と。豊かさを実現する為に、西洋社会は財を大きくする事を目指し、東洋社会は欲望を抑える事を目標にしていた。今の世の中では、欲望を抑えようとすると消費が減ってしまう。より欲望を増大させ飢餓状態にすることで、財を生産し続ける事が資本主義経済の本質であるとするならば、資本主義とごみ問題の解決は相容れないのではないだろうか。

■おわりに

以上、様々な問題があるが、これらの解決の為には政財界の積極的な動きが期待できないため、市民団体やNPOが全ての希望のような気がする。今の物質循環が遮断している社会から物質循環が完結した持続可能な社会へ転換し、質的に豊かな社会を実現する為に、市民連邦のような市民団体やNPOにがんばっていって欲しい。

(文貴:高野研一)